―2004年に「みんなのうた」で発表した、シングルマザーの結婚をテーマにした歌「ママの結婚」も大きな話題になりました。

坂田:この歌を作ろうと思ったのは、まだ「おかあさんといっしょ」のおにいさん現役のときです。あるときシングルマザーのかたから「おさむおにいさんへ」とファンレターをいただきました。そこに、「おにいさんは番組に何曲も歌を書いておられますが、私のようなシングルマザーを応援する歌があってもいい、あったらうれしいです」という思いが書いてあったんですね。

 そうか、そういうおかあさんもいらっしゃるのか…そういう歌も作ってみたいと思いながらも、シングルマザーがテーマの歌を作っても「おかあさんといっしょ」では歌えないかもなあと思ったりして。

 それで、番組を卒業してから歌を作って、ずいぶんたってから、「みんなのうた」の枠だったらもしかしたらいけるのかなあと提案したら、「じゃあやりましょうか」となりました。でも、「みんなのうた」でも、担当してくださった方は「これはねえ…」ってけっこう悩んでたみたい。シングルマザーの歌はそれまでほとんどなかったわけだしね。

 考えてみれば「ママの結婚」は手放しでハッピー!という歌ではないじゃないですか。おかあさんといっしょのおにいさんをやってた頃は、影のない幸せを歌おうと思っていたので、その裏っていうか、"なにかあったあとの幸せ"みたいなことはあまり考えて来なかったんですよ。「ママの結婚」でいえば、その前提に、離婚とか別離とかという影になる部分がある。

 この歌は、おかあさんが結婚するわけですから、こどもとしては、ほんとうはそんなにうれしくないのかもしれない。なのに、おかあさんのために「おめでとう」って言ってくれている――じぶんで詞を書きながら、歌の主人公の子を「この子すごいよね」なんて思いながら作っていました。そのうえこの子、ママの結婚を祝福しながら「おとうさんのことは忘れないよ」って言うんですね。そこもすごいなあと(笑)。

 …あ、おとうさんを忘れないとは言うけど、おとうさんが死んだかどうかはべつに詞には書いていないんです。オンエア後に、どっちなんですかと何度か聞かれたけれど、――それは僕にもわからない(笑)。

 うれしいことに「ママの結婚」には大きな反響をいただきました。おとうさんおかあさんがともに揃っている場合も、こどもからの愛情はもちろん十分に感じるものでしょう。それでも、シングルマザーだからこそ感じられる、こどもからのものすごく深い愛情があって、その気持ちがしっかりと伝わったのかなと思います。「ママの結婚」の発表後にいただいたシングルマザーのかたからの感謝や感想の手紙は、――ひとつひとつのお便りが重かったです。