こどもたちとのふれあいから生まれた定番曲「どんないろがすき」

―その翌年に「おかあさんといっしょ」のうたのおにいさんに就任した後も、数々の名曲を番組に提供しています。定番曲「どんないろがすき」の誕生の経緯は?

坂田:スタジオの収録でこどもたちが席に座って、もうすぐ始まるっていうときに、ひとりの女の子が僕の方に近づいてきて「私ね、緑色が好き」って言ったんです。「おお、わかったわかった」って言ったら、他の子たちもそれ見てたんでしょうね、「僕は黄色」「わたしは赤」ってわらわらわらわらみんな来て、収録のスタートが遅れたりするほどで。こどもたちって、こんなに色のことが好きなんだ!…ああ、こういう曲を作りたいなあ、と。

 で、♪どんないろーがすきー~ っていうあの歌を作ってディレクターに聴いてもらったら、最初は「こんな単純な歌じゃちょっとねー」って反応だったんです(笑)。…いや、単純だからいいんだけどなあって思って「単純だから、…どうスかね?」ってもう一押ししたら、そのあとみなさんで会議してくれたのかな? 「じゃ、やってみましょうか」となりました。だから初めはそんなに推されてなかった曲だったと思います。

 それが、コンサートで披露するときに会場の子どもたちに「何色が好きー?」って呼びかけたり、間奏で「次は何色かなー?」って言ってから2番に入ったり。そういう受け答えができるかたちにしていくと会場もどんどん盛り上がって、だんだん定番曲に育って行ってくれました。
 こどもの歌というのは、詞だけじゃなく、メロディーもついて、そしてみんなで歌ってこそのものです。だから、詞だけをとりだしての検討も必要あると思うけど、みんなで聴いて歌ってからじゃないと、ほんとうにはわからない。そこまでやってから判断しましょうよ、と(笑)。

 ちなみに「どんないろがすき」は、詞曲が同時にできた歌です。この詞にほかのメロディーはつかないと思えるほど、詞と曲が一体になった歌だと思います。付け加えると、この詞の権利はひょっとしたら、JASRAC的にはあのこどもたちに、――僕に「緑が好き」って言ってくれた子に何か払わなければいけないのかもしれない(笑)。

 僕の場合、この「どんないろがすき」のように、何かはっきりとしたきっかけがあって作ることも多くて、例えば「にじのむこうに」という歌は、新幹線の中で、窓の外の景色を見ながら作りました。大阪から東京へ戻ってくる新幹線だったかな。静岡あたりで、その前まで雨が降ってたんでしょうね。虹が出ていて――それを見たまま ♪あーめーがーあがったよー おーひーさーまがでてきたよー あおいそらのーむこうにはー にじがーかかったよー ――って、もう、そのままですね(笑)。