「おかあさんといっしょ」を卒業した後も、こどもの歌を中心とした活動をされて来ました。

坂田:番組を卒業したときには、以前シンガーソングライターとして活動していたときの事務所やかつての仲間たちから、もとのフォークとかロックの世界に戻ったらどうかと言われたりして、それもあると思ったんだけど、その時にはもう、なんていうんですかね、――すでにこどもを愛してしまったので!!…って大げさだよね(笑)。でもなんか、そういう気持ちだったんです。うん。

  卒業してすぐに、前にやってたようなライブをライブハウスでやってもみたの。そうしたらさ、こどもが来ちゃうのよ(笑)、別にそんなに宣伝してないのに。で、「こんちは」ってステージに出てったら客席にこどもがいるじゃん。昔の感じで「(※低い声で)今日はどうもありがとう。じゃ次の曲は―」って言ってもさ、こどもがいたらダメよ(笑)。こどもたちがいたら、フツーにおにいさんになるよ。そのときに、あー僕もうこどもを愛しちゃったんだ、みたいなことが分かりました。

 それからは、現役のときももちろんこどもたちを楽しませたいという思いで歌を作っていたけど、卒業してからは、さらに真剣にこどもの歌づくりに取り組むようになりました。

 …でも実は、こどもたちのため"だけ"に、ということもあまり思っていなくて。こどもたちの後ろにはおとうさんおかあさんがいて、その後ろにはおじいちゃんおばあちゃん…がたくさんいて、そうしたみんなが楽しんでくれればいいなという思いもあるんです。

 童謡・こどものうたを、こどもだけのものと言ってしまうと、一過性の、こどものときに聴いて終わりなものになってしまう。

 僕が考える童謡っていうのは――、僕がこどものときに聴いてた童謡っていうのは、僕もそうだったけど、ビートルズが出て来たりストーンズが出て来たりして衝撃を受けると、もうそれまで聴いてた童謡のことなんて忘れてしまうと思うんです。でものちに自分に子供ができて、その子を見た時に「ああ、こんな歌あったなあ」と思い出していっしょに聴いたり歌ったりする。で、またその子のこどもが別の音楽に夢中になって忘れて、また結婚して…そうやって世代を越えていく歌だと思うんです。

 僕らの聴いてた大人の歌って、「流行り歌」になっちゃうといつか消えていくものだけど、こどものころ聴いたそういう歌っていうのは、心のものすごく深―いところに残っていくんだよ、きっと。

 「七つの子」とかやっぱり覚えてるし、いま聴いても、ああこういう歌あったなあ、いいなあみたいな、そういう歌こそが「童謡」で、そういう歌を作るためにがんばらないかん!と思います。

病院の小児病棟や、養護学校を訪ねて歌う活動も長く続けています。

坂田:コロナの影響でこのところずっと行けていませんでしたが、これからも依頼をいただけばもちろん(!)

 たとえば病気のこどもたちのところへ行くのは――、だって、いっしょに歌うと一瞬でも病気のことが忘れられるじゃないですか。それはほんとに一瞬ですよ。でも、意味がないわけじゃない。

 「一期一会」というか、同じ病院で何回もやっているので、次にその病院に行ったらその子がいないということもある。だから一期一会のこの時間をなんとかせねばっていう感じですね。

 こどもたちは"今"がだいじだから思っていないかもしれないけれど、こっちは大人だから「ああ、来年行っていなかったら…」と考えてしまうんだけど、だけど泣いてちゃしょうがないから。こどもたちはそのときだけプレイルームに集まって、歌が終わったらまた病室に戻ってしまうのだから、呼んでいただいたら行くしかねえべ(!)。――こうした活動はずっと続けたい、やっていきたいと考えています。