良質のこどもの歌を作り続けてきた実績と、うたのおにいさんとしての活動に、2021年、「童謡文化賞」が贈られました。

坂田:「童謡文化賞に選ばれたから受けていただけますか」という一報を受けたときは、「はい? …僕がですか?」って感じでした。その賞がどんなものかもよくわからなかったけど、「…こどもの歌をたくさん作ったので、あれかな、くださるのかな?」と(笑)。

 それまで自分の作っている歌を童謡って言われたことがあまりなかったし、「おかあさんといっしょ」から生まれる歌もあまり童謡という言い方はしていなかったので、実感がなかったんです。むしろ「坂田くんの作る歌、あまり童謡とは思えない」ってよく言われたから(笑)。…まあそれが童謡の協会から賞をいただくなんて(!)。

 もともと自分はシンガーソングライターでフォークとかロックとかの人間で、そこから枝分かれして今があるわけです。童謡文化賞とか童謡賞というのは、たとえばクラシックの勉強をしたり、芸大や音大を出て童謡を研究して作っているひとがもらうんだってなんとなく思っていましたから。だから、僕のような者を選んでいただいたのはうれしいんだけど、どこか引け目みたいな気持ちがずっとありました。

 それまでフォークとかロックをやってきた者がいきなり「おかあさんといっしょ」に出てるのを見た仲間たちはさ、そりゃたまげたよ。「おまえ何やってんだ、どうした?」みたいに言われてさ。その時の気持ちは半々で、「ごめんね」とかもあるし、反対に北海道の親たちは大喜び(笑)。「フォークだか何だか知らないけどこどもだって生まれようとしてるのに何考えてるんだ」って感じだったのが「おかあさんといっしょ」は全国放送よ。NHK。俺、親孝行したなと。そんな気持ちも確かにあった。でもさ、ライブハウスの仲間たちには「可哀そうにな、たいへんだろ」みたいに思われてたけど、こどもたちといると、だんだんこどもたちのほう行くよ、それはやっぱり。

  だから、「おかあさんといっしょ」を卒業以来、こどもたちに喜んでもらいたいと思って作った歌が、やってきたことが間違いじゃなかったよって認められたようで、童謡文化賞、それはもうありがたく受けることにしました。

「童謡文化賞」の受賞をきっかけに、日本童謡協会にも入会されました。

坂田:実は僕、そういうアカデミックに童謡でつながっている仲間がいるってよく知らなかったんです。童謡協会のかたに、これこれこういう組織でっていう話を聞いて、じゃあちゃんと――ちゃんとっていったら変ですけど、いろんなかたの意見を聞いて勉強しなくてはと思ったんです。僕みたいな半端者みたいな出方ではなくて、きちんとアカデミックに考えられているひとが、どうやって歌を作ってるんだろうとか、そんな話を聞いてみたいと思って入会を決めました。

―いや、坂田さんこそが童謡・こどもの歌づくりの王道を行かれていると思います。

もし、もしもそう言っていただけるのであれば、それは、作詞作曲して歌ってをこどもたちといっしょにやって来れたからだと思う。それしか考えられない。そういう環境に置かれた喜びというか、運の良さを強く感じます。

  やっぱり、歌を作ったはいいけれど発表の場がなくて、ということではなかなかうまくいかないのかもしれない。こどもたちの反応を見て、ここを直してみたりだとか、これを喜ぶならじゃあこんなタイプの歌も作れるかなって試してみたり、それが大切。

  童謡協会では、まずはみなさんといっしょに勉強するところから始めたいと思います。…今までがあんまりだったので(笑)。